【現地レポート】ユーロ導入に伴う値上げラッシュのクロアチア!市民からは不安と怒りの声

 

みなさん、こんにちは!
クロアチア在住ガイドのまみです。

 

先日こちらの記事(ユーロ通貨導入&シェンゲン加盟のクロアチア【2023年、新たな年がはじまりました!】)でもお伝えしたとおり、今年、2023年1月1日よりクロアチアではユーロ通貨が導入されました

 

(これまではクロアチア独自の「クーナ(HRK)」という通貨が使用されていました)

 

ユーロが導入されて丸3日経ちましたが、クロアチア中で市民たちの混乱や不満が渦巻いている模様・・・。

 

そこで今回は、この3日間、私が実際にクロアチアで生活して見聞きしたことや地元メディアやネットの声をまとめて『ユーロ通貨に切り替わる真っ最中、クロアチアの今』をお届けします!

ユーロ表示になった値札

2023年1月2日撮影。ザグレブの大型スーパーにて。

 

元旦(1月1日)のクロアチアは、国中ほとんどのお店が閉まっているたため買い物に行く機会がありませんでしたが、2日、3日になり近所のショッピングモールやスーパーに足を運んできました。

 

クロアチアでは2022年9月5日よりユーロとクーナの二重表記がはじまり、2022年12月31日までは下の写真のとおり、パッと目に飛び込んでくる価格はクーナ表記。そして、その横に小さくユーロでの値段が書かれていました。(↓)

 

2022年9月下旬頃に撮影した写真。クーナでの価格表示がメインでした。

 

ですが、2023年1月1日からはそれが反転。目に飛び込んでくる価格はすべてユーロ表示となりました。(↓)

 

2023年1月2日撮影。ユーロ価格表記がメインになっています。

 

周りのクロアチア人たちも「ここ3カ月、二重表記だったとはいえ、ほとんどユーロでの価格は見ていなかったし・・・。数日前からユーロ表示がメインになったけれど、パッと見感覚がよくつかめないから、どうしても小さく書いてあるクーナ価格を確認してしまう」と話しています。

 

(なお、市民が金額の把握に困らないよう、価格の二重表記自体は2023年いっぱいまで続けられる予定となっています)

 

数か月経てばユーロでの金銭感覚もつかめてくるでしょうが、私もやはりどうしても、まだ小さく書かれたクーナ価格での表示をつい確認してしまいます。

 

二つの通貨で支払いができる2週間

クロアチア独自通貨であったクーナ。もうすぐユーロに完全に切り替わります。

 

2023年1月1日~14日は『通貨の移行期間』として「クーナでもユーロでも、どちらの通貨でも支払いができる」という特別な2週間。(1月15日以降はクーナでの支払いは完全に廃止。ユーロ通貨のみがクロアチアで利用できる通貨となります)

 

ただし、原則おつりはユーロと決まっているため、クーナで支払いするとユーロでおつりが返ってきます。

 

そのため、各店舗はおつり用のユーロ硬貨・紙幣の準備が大変だったのだとか。個人経営の小さい店舗では「そんなにユーロ紙幣・硬貨を用意できそうにないので困った・・・。」と、ユーロ導入前に頭を悩ませているという声も耳にしました。

 

2023年1月2日、クロアチアではじめてユーロ通貨で買い物してきました!

 

1ユーロ=7,53450クーナと換算レートは固定されており、スーパーや店舗などレジがあるところは、おつりの計算も機械(レジ)が瞬時に自動的にしてくれるものの、やっぱり何かと大変みたい。

 

昨日、今日、店舗のレジで働いているみなさんにお話を聞くと、みんな口を揃えて「大変・・・(苦笑)」と辟易した様子でした。

 

今日、お話を聞いたショッピングモール内にある服屋さんで働く女性は「クーナとユーロ、両方の紙幣とコインがレジに入っているのでややこしい。それにユーロを扱いなれていないから、どうしても、受取額の確認やおつりの準備に時間がかかってしまう」と話していました。

 

クーナ受け取り拒否でトラブルも

地元メディアの報道によると、一部で「クーナの受け取り拒否トラブル」も発生しているのだとか。

 

上でもお伝えしたとおり、2023年1月1日~15日は『通貨の移行期間』として「クーナでもユーロでも、どちらの通貨でも支払いができる」ルールとなっていますが、ザグレブのあるキオスクで「クーナは受け付けない」とクーナ硬貨の受け取り拒否のトラブルがあったと報道されています。

 

値上げラッシュ

 

2023年に入って、まだ2回しかスーパーに足を運んでいませんが、私が日頃利用している店舗では年末(2022年末)と比べた価格の大きな変化はまだないように感じています。

 

ですが、地元メディアやSNS、ネットの声を見聞きする限り、あちらこちらで値上がりしている模様・・・。

 

クーナからユーロ価格への切り替えにあたり、価格の「切り上げ」が至る所で行われているようです。

 

特に注目されているのはパンコーヒー価格の値上がり。

 

 

一部のパン屋さんではクロアチアの人々が主食としてよく食べる精白パン(Bijeli kruh)が、年末(2022年末)と比べて、年明け(2023年1月1日)以降は約50リッパ(約90円)も値上がりしたと報道されています。

 

「毎日食べるものだし、特に低所得者の方や年金暮らしの方にとっては大打撃だ」とネットでは非難の声が散見されます。

 

そして、数ある値上げの中でも、SNSなどで特に市民の嘆きの声が多く見られたのがカフェのコーヒー価格の値上げ。

 

 

地元メディアの報道やネット記事のコメント欄などを確認すると「年が明けて、行きつけのカフェに行ったらユーロ価格になっていて、よく見たらコーヒー1杯あたり2.5~3クーナ(約50~60円)も上がっていた・・・!」という声が続々。

 

多くのクロアチア人にとって『カフェでのコーヒータイム』は日常に欠かせない大切な時間。

 

塵も積もれば山となる・・・ですし、「たった一晩で、もう身近なものがこんなにも値上がりしている!」と驚き、怒り嘆く市民の声で溢れています。

 

「ユーロ導入による物価上昇の指標」で一番話題に上がっている品目のひとつが『カフェのコーヒーの値段』であるところが「なんともクロアチアらしいな~・・・」と感じました(苦笑)

 

“見せかけ”の値下げ

一部の小売チェーンは、ユーロ導入前(2022年内)に商品価格を20%値上げした上で、ユーロ導入後(2023年1月1日以降)に「値段を“切り下げた”」と誇らしげに語っているのだとか・・・。

 

クロアチア消費者保護協会 (HUZP) のアナ・クネジェヴィッチ会長「(そもそも短期間で)20%も値上がりしているのに、(ユーロ導入後に)『たった数セント安くなった』だなんて、どんな価値があるのでしょうか(価値なんてない)」と苦言を呈しています。

 

SNSに溢れる市民の不満の声

 

他にも、いろんな記事やネットコメントを確認しましたが、このような声も・・・。

 

「ユーロが導入されたけれど、それに伴う物価の上昇で、このままだと生活が立ち行かなくなる。お給料も上がってくれないと困る

 

クロアチアのオシイェク(Osijek)では公共交通機関も値上がりしている模様・・・。「トラムは11クーナだったけれど、現在は2ユーロ(15クーナ)になっている。」

 

「いつも食べていたブレク(クロアチアの伝統的なパイ)・・・。つい最近まで12クーナだったのに、2ユーロ(15クーナ)になっている」「ブレクひとつが7クーナで買えた時代はどこに行ったんだ?!」

 

 

「5年間通っていた美容室。ずっと60クーナだったのに、今日行ったら10ユーロ(75クーナ)になっていた。値上げの理由を美容師さんに尋ねたら『キリの良い数字の方が私にとっても、あなたにとっても支払いのやりとりがラクでしょ?』だって。もうあの美容室には行かない」なんて声も。

 

「今年に入って3件カフェに足を運んだけれど、どこのお店もコーヒー1杯あたり最低1クーナ(約19円)は値上げしていたよ」

 

「ずっと通っていたカフェのコーヒーが1杯12クーナ(約230円)から15クーナ(285円)に上がっていた。信じられない!」

 

「ユーロが導入されて、たった3日でこれ。今後ますます物価が上がるんじゃないか・・・。」と不安視する声もありますが、さて一体これからどうなることやら・・・。

 

ただでさえインフレが激しいクロアチア

 

実は、クロアチアは今回のユーロ導入以前より(特に2021年以降)じわじわと物価上昇が続いてきていました。

 

2022年9月の時点でも、クロアチアはEU加盟国の中で最も物価の上昇が激しい国のひとつと報告されており、パンの価格に関しては1年間で30%も値上がりしました。(ハンガリーではパンの価格が 1 年間で 65% 上昇。リトアニア、エストニア、スロバキア、クロアチアが約 30% 上昇しました。)

 

ここ数年、クロアチアの平均給与もひと昔と比べると少しずつ上がっているとはいえ、一般市民の肌感覚的には「給与も年金もほとんど増加していない」という状態。

 

そんな中、年間インフレ率はすでに10%を超えており(2022 年11 月には 13.5% までさらに上昇し、前月の 13.2% から過去最高を更新しました)、石油、電気、ガスなどのエネルギー価格の上昇に伴い、食品、光熱費、輸送、サービスの価格もますます上昇しています。

 

実際、コロナ渦以降、じわじわと物価が上がってきているのを私も日々の生活で実感してきました。

 

ここ1年程で2倍近く値上がりしたお米

 

例えば、日頃私がよく買うものでは、2019年頃までは

 

お米1㎏:11クーナ前後(約210円)
牛乳1L:6クーナ前後(約115円)
卵(10個):12クーナ前後(約230円)

 

・・・で買えたように記憶していますが、今(2023年現在)は

 

お米1㎏:23クーナ前後(約440円)(※商品によっては1kg40クーナ前後のものも!)
牛乳1L:8クーナ前後(約150円)
卵(10個):23クーナ前後(約440円)

 

・・・と倍近くまで値上がりしたものも。

 

ここ2、3年でかなり物価が上昇しているのに、ユーロ導入に伴う更なる物価上昇は間違いなく一般市民の生活を苦しいものにすることでしょう。

 

「世界的には食料価格は6か月間連続で下落している」そうですが、クロアチアでは断続的に上がり続けている点も一部メディアで指摘されています。

 

「便乗値上げ」対策は機能していない?

クロアチア発行のユーロ硬貨

 

ユーロ導入前にクロアチア政府は「経済産業省はユーロ導入により、物価の不適切な上昇が起こり、国民や経済に悪影響を与えることがないよう監視する。不当な値上げを行った事業者はブラックリストに掲載され公表される」と声明を出していました、早くも「もはや監視機能は機能していない」と揶揄する市民の声も。

 

2023年1月3日、フィリポビッチ経済相は、「ユーロへの切り替えによる価格の上昇(便乗値上げ)は受け入れられるものではなく、政府は人々の生活水準を守るために全力を尽くす」と述べ、不当な値上げにはブラックリストへの掲載や価格固定措置など、あらゆる措置を検討しているとか。

 

ですが、実際に「どこまでが不当な値上げなのか、その線引き・立証が難しいのでは」という声もあるとか。

 

さて、今後どうなるのか、いち消費者としても動向を見守りたいと思います。

 

偽ユーロ紙幣事件も

 

また、ユーロ紙幣を見慣れていない人を狙って、偽ユーロ札を使用しようとする不届き者も報告されています。

 

クロアチア警察はユーロ(特に紙幣)の受け取り時には偽札が紛れ込んでいないか「よく触れて、見て、動かして、確かめてください」と市民に注意を促しています。

 

ユーロ紙幣の見本をしっかりと確認したい方はクロアチア中央銀行のこちらのページでご確認ください。

 

元旦のザグレブ、イェラチッチ総督広場の様子

 

新年早々、ユーロ導入に伴い、てんやわんやのクロアチア。

 

私自身も慣れるまで少し戸惑うこともあるかもしれませんが、自分が住んでいる国の通貨、親しみ慣れた通貨が切り替わる瞬間に立ち会えるなんて、そうそうない機会。

 

正直、これ以上の物価上昇は勘弁してほしいですが、クロアチアが変化しつつあるこの過渡期の観察を楽しもうと思います。

 

今後、観光でクロアチアへいらっしゃるみなさんにとっても影響がでそうな価格変更情報などがいろいろ出てくるかと思いますが、その都度、当サイトTwitterなどでみなさんにシェアしますね!

 

それでは・・・!

 

(2023年1月4日公開 小坂井真美) 

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