【現地レポート】地震と新型コロナに震撼するザグレブ┃半日経った街、人々の様子

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部の様子

 

今朝お伝えしたとおり、3月22日の朝6:23、クロアチアの首都ザグレブでM5.5の地震が発生しました。

 

クロアチア史上、過去140年で最悪の地震だと報道されています。

 

■地震発生直後のザグレブ市内の様子(写真15枚)は次の記事をご覧ください(↓)

 

ザグレブでM5.5の地震が発生。大聖堂の尖塔も崩れ、市内で被害が出ています

 

今クロアチアは他の多くのヨーロッパ諸国と同様、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、様々な閉鎖・制限措置が取られている状態。

 

 

実質国境閉鎖、全土のあらゆる店舗(スーパーや薬局以外)も閉鎖、さらに今日22日からは公共交通機関も閉鎖、市民の不用意な外出が自粛されるという異例づくめの事態の中、追い打ちをかけるように大きな地震が発生しました。

 

地震発生直後のザグレブ市内の様子はこちらのブログ記事にてお伝えしましたが、その後半日の間に少しずつ市民は冷静さを取り戻しつつあります。

 

安全な住処を失った人々

 

私が住んでいる新市街は比較的築年数が浅い(築50年以下)ものが多いため、大した被害は報告されていないようですが、築100年以上の建物が立ち並ぶ旧市街及びザグレブ中心地では大きな被害が出ています。

 

「うちは築120年のアパートだったけど、運よく何もなかったよ」と話す友達もいますが、一方で「建物のあらゆるところにヒビが入ってしまった・・・」という友達も。

 

ニュース報道によると、なかには安全な住処を失ったため、避難先として提供されたザグレブの学生寮に身を寄せている人もいます。

 

被災した病院も

 

ザグレブにあるマタニティクリニックでは、被災で建物が危険な状態にあるため、新生児たちを移動させることに。移動作業のために軍警察の他、ザグレブのサッカークラブのサポーター(バッド・ブルー・ボーイズ)たちが被災直後すぐに集結しボランティア活動に尽力したと報道されていました。

 

なお新生児たちの移動先は、本来は新型コロナ感染者のために用意されていた、別の病院の暖房完備の特設テントとのこと。

 

今朝の地震による怪我人は今日現在では17名(うち1名は重篤)と報道されおり、「市内の建物の被害状況と比べると、幸い怪我人は少なかった」と言われていますが、今後新型コロナ感染者が急速に増えて病院のキャパシティを超えることにならないかと懸念されています。

 

昨日まではみんな自宅に引きこもって最小限の接触しか行っていませんでしたが、今日は地震によるパニックの状況の中、多くの市民が外に出て(距離をとるようにという指示は一応あったみたいですが・・・)近い距離でコミュニケーションを取っていました。

 

ただでさえ新型コロナ感染者が少しずつ増えつつあり、医師や看護師の人手不足が懸念されている中、これ以上感染者が増え続けることはなんとしても避けたいクロアチア。(3月22日現在、国内の感染者は254名)

 

地震の恐怖からザグレブを自家用車などで離れはじめた人もいますが、自己隔離が義務付けられているにも関わらず不用意に外を出歩いたり、街を離れる者は罰則の対象となると注意喚起されています。

 

ザグレブの街並み

 

なお、ザグレブ市内で被災した病院があるという報道とともに、ザグレブの街としての懸念点、弱点が指摘されていました。

 

それはザグレブの南側に位置し、多くの市民が住む新市街(Novi Zagreb)に大きな病院がないこと。

 

ザグレブはサヴァという川によって「旧市街・中心部」と「新市街」が分断されているという特徴を持つ町です。

 

友達の医師が以前から度々「なぜザグレブ市、国は新市街に病院を建てないんだ。大きな災害があると、非常にまずい事態に陥るかもしれない。街が川で分かれているのに、橋が落ちたり、道路が酷く破壊されて車両が通常通り走れないような事態になると、どうするつもりなのか」と話していましたが、今日まさに同じことを話す医師がテレビニュースで取り上げられていました。

 

今朝の地震では、幸い新市街の方はほとんど被害がなく、市内中心部でも怪我人は17名と人的被害の件数はさほど大きくなかったため今のところは大丈夫そうですが、もっと大きな地震だったらどうなっていたんだろう・・・とザグレブ市民は不安を口にしています。

原発も無事

 

クロアチアは隣国スロベニアとクルシュコ原発を共有しています。(ザグレブ近郊に位置しています)

 

M5.5とはいえ「原発は大丈夫だろうか・・・」と心配でしたが、原発に異変はないとのこと。本当によかったです。

 

ザグレブ空港には被害なし

ザグレブ空港(※過去の写真です)

 

なお、地震によるザグレブ空港への被害はないとのこと。

 

いずれにせよ、現状クロアチアの国境は一部の例外を除きほぼ完全閉鎖状態なので、今空港を利用する人はほとんどいないですが・・・。

 

不幸中の幸い

 

地震の衝撃で尖塔の一部が崩れたザグレブ大聖堂。下はドローンでの空撮映像です(↓)。

 

 

なお、ザグレブ市内各地の教会でも「天井の一部にヒビが入った」「祭壇の一部が壊れた」「天井が崩落した」というような被害が報告されています。

 

 

(↑ こちらはザグレブ市内中心部にある教会の内部、地震発生直後の様子)

 

今日は日曜日。敬虔なカトリック教徒が多いクロアチアでは、日曜日はたくさんの人が早朝から教会のミサに参加する日です。

 

もしコロナ感染拡大で制限措置がなされていなかったら、早朝からミサに行く人、散歩を楽しむ人がいて、もっと多くの人的被害が出ていたでしょう。

 

またちょうど今日からクロアチア全土で公共交通機関の運行が一斉停止されていましたが、「もしいつも通りザグレブ市内でトラムやバスが走っていたら、もっとたくさんの人が出歩いていたかもしれない。怪我人が出ていたかもしれない」と言われています。

 

「不幸中の幸い、感謝しなければ・・・」と周りの家族や友達は口をそろえています。

 

強風に注意

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部 イリツァ通り

 

昨日まで暖かくずっと良いお天気が続いていたのに、どんな不運な偶然なのか今日から急に冷え込み強い風が吹きつけるようになったザグレブ。

 

ニュースでは「今日から数日の間、強風が吹き荒れる可能性があります。強い風により、落ちかけた屋根瓦や建材が煽られて落下する可能性もあるので十分に気を付けるように」と注意喚起がなされています。

 

 

(↑)上の動画はザグレブの中心部、イェラチッチ総督広場の光景。

 

広場に面した建物の一部、塔が壊れかけており、放置しておくと危険だということで撤去作業がなされました。

 

新型コロナのせいで気軽に外に出ることができず、今のような状態で私が外に行ったところで邪魔になるだけなので、おとなしくメディアを通して市内の様子を見守ることしかできませんが、大好きな街が傷ついている光景を見るのは辛く悲しいです。

 

余震に注意

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部 イェラチッチ広場周辺の様子

 

本震と思われる地震(2020年3月22日6:23の地震)が終わった後も、たびたび弱い余震が続いています。

 

はじめて経験する大きな地震にザグレブ市民は大きな不安を抱いています。

 

Facebookでは「さらに大きな地震がくる」と偽情報が流れており、一部の市民の間でパニックになっていた模様。

 

クロアチアの国営放送では「大きな余震がないとは言い切れないが、残念ながら地震の正確な予知、予想はできない。根拠のない怪しい情報に振り回されず、冷静に」と呼びかけが行われています。

 

人生ではじめて地震を経験したクロアチア人の夫は「東日本大震災は(震源地は海上だったとはいえ)M9だったんでしょ・・・?日本人はこんな地震を何度も何度も乗り越えてきたんだね。すごいね」とポツリ・・・。

 

「もっと強い地震が来るのでは」という拭いきれない不安を抱えながら、多くのザグレブ市民が夜を明かすことになりそうです。

 

ヨーロッパの地震の怖さ

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部の様子

 

私は31年間の人生の中で2度の大きな地震(阪神大震災と東日本大震災を大阪で経験)、そして小さな地震を何度か経験してきたため、なんとなく揺れの感じで「どれくらいの規模の地震か。かなり大きな地震なのか」がわかっているつもりでいました。

 

なので、今朝のザグレブの地震には驚いたものの、正直なところ、これほどまで市内で被害が出るなんて予想していませんでした。

 


 

上は地震直後の自身のツイート。

 

予想外の地震に飛び起き、驚いたものの、揺れの体感から「これくらいの地震なら大したことない。自宅やご近所さんのお家にも被害はないみたいだし・・・」と思い込んでいました。

 

さらに続いて「ひょっとして、イタリアかどこかで大きな地震があったんじゃ・・・?」と海の向こうのイタリアのことを想いニュースを確認してみると、なんと震源地はザグレブ北7㎞であることが判明。

 

しかも時間が経つにつれ、ザグレブ市内中心部・旧市街エリアの酷い状態があらわに。

 

「確かにそこそこ強い揺れだったけど、これくらいの地震でここまで被害が出るのか・・・」と信じられませんでした。歴史を感じさせる、築100年以上の重厚で美しい建物が素敵なヨーロッパの旧市街ですが、耐震対策がなされていない建物はこれほどまで地震に弱いのかと痛感しました。

 

「たった数キロ程度しか離れていないのに・・・まるで違う街での出来事みたい」と、友達のことを案じながらも、どこか現実味がないまましばらくテレビ画面を見つめていました・・・。

 

周りの様子

南側の尖塔の一部が壊れたザグレブ大聖堂

 

ザグレブに住む友達とお互いに「大丈夫?」と確認し合い、幸い私の周りの友達はみんな無事が確認できました。

 

地震発生直後は「死ぬかと思った」「もうだめだとベッドの中で神様に祈った」「子供を庇うのにとにかく必死だった」と、みんな神経が高ぶった様子で口々に話していました。

 

なかには住んでいるアパートにヒビが入ってしまい非常に心配な状態の友達も何名かいますが、みんな驚くほど前向きです。

 

ガイド資格を取るために一緒に学校に通い勉強した友達は「アパートにヒビがはいっちゃった・・・建物の状態はまずまずだね。きっと、きみがテレビで見る光景より、実際の方がずっと悪いよ。でも、怪我人も少なかったみたいだし、僕も大丈夫!感謝しなきゃ!

 

地震が起こった時、僕が唯一とっさに掴んで飛び出したもの、わかる?もちろん、苦労して取ったガイド証さ!(もちろん冗談です)もう役に立たないかもだけど(泣)でも、無事だから心配しないで」とコロナ対策のマスクをばっちり着けながらも笑顔の写真を送ってきてくれました。

 

「家の外はぐちゃぐちゃさ。はじめて経験した地震。発生時はどうしたらいいのかわからず、ただただ風に吹かれる葉っぱみたいに震えていたよ・・・」という友達も。

 

周りはガイドをしたり、旅行会社経営など、観光業に携わっている友達ばかり。

 

「あ~。コロナに続き地震。こりゃ、今シーズンのザグレブ観光は終わったも同然だね。まあ、あきらめるの早いかもしれないけど・・・」なんて嘆きながらも「でも、友達や家族が無事なのが何より一番。本当に良かった!みんなで力を合わせれば、なんでも乗り越えられる。頑張ろう!」と皆同じようなことを言っています。

 

決して皆が皆、前向きな人ばかりではないのでしょうが、はじめて経験した地震で不安でしかたないであろう中、ユーモアを交えて前向きな彼らの姿に思わず心がジンとしました。

 

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部、イェラチッチ広場の様子

 

でも、今朝地震で飛び起きたのがトラウマになって「しばらく夜ぐっすり眠れそうにない・・・」という声もちらほら。

 

EUからの援助も予定されているそうですが、隣国スロベニアは早くも支援を決定。80名を収容できるテント、60台のベッド、そしてできるだけ多くの寝袋、そして20台のヒーターが贈られると報道されています。

 

一方、海を渡った対岸イタリアからの悲しいニュースに戦々恐々。「前向きに頑張ろう」・・・とは言いながら、新型コロナ感染による死者が急速に増え続けているというイタリアのニュースを見て、みんな「本当にこれからどうなるんだろう・・・」と、本当は不安な気持ちでいっぱいです。

 

クロアチア戦後(95年以降)で間違いなく最悪の一年」と言いはじめる人も出てくるほどですが、これ以上事態が悪化しないこと、新型コロナがこれ以上拡大しないこと、そして街が一日も早く復興することを心から祈ります。

 

なお、クロアチアにおける新型コロナ関連情報は「【まとめ】新型コロナ、クロアチア旅行は中止するべき?現地の状況は?(随時更新)」に随時情報をUPしています。

 

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(2020年3月22日 小坂井真美)

 

クロアチア大地震被災地への募金、支援について

 

この度、駐日クロアチア共和国大使館による支援金受付のため口座が開設されました。

 

ご興味をお持ちくださる方はこちらの記事(【クロアチア大地震義援金】駐日クロアチア共和国大使館が寄付金の口座を開設)をご覧ください。