海外(クロアチア)で大地震を経験して感じたこと。命を守るために考えておきたいこと

2020年3月22日 地震発生当日のイェラチッチ総督広場西側の写真

 

クロアチア経験した2度の「大きな」地震

 

当サイトでも何度かお伝えしてきましたが、私は去年(2020年)一年間で2度の大きな地震をクロアチアで経験しました。

 

一度目は2020年3月に起きたザグレブ地震。二度目は年の瀬12月29日にザグレブから南東約50㎞のペトリニャで起きた地震

地震の規模はザグレブ地震がM5.5。ペトリニャでの地震はM6.2。ともに各震源地付近の町の建物が被災したり、死傷者も出るなど、大きな被害をもたらしました。

 

「マグニチュード5.5や6.2って、実際どれくらいの揺れなの?ピンとこない」という方も多いと思います。

 

地震のエネルギーの大きさ(規模)を「マグニチュード」、地震が観測されたした各地域での揺れの大きさを「震度」といいます。ちなみに東日本大震災はM9(※モーメントマグニチュード)、最大震度は7(宮城県栗原市)だったそうです。

 

近年のクロアチアで最大規模だったペトリニャ地震の規模はM6.2ですが、ヨーロッパ・クロアチアの基準で見ると「震度7」に相当するような巨大地震だとも言われています。「震度7」は10段階ある震度階級の最大値です。

 

(※震度は国によって表記が異なりますが、今回の地震はクロアチアにとっては「震度7」の巨大地震だったという意味で、「日本基準の震度7の地震」ではありません

 

ザグレブ地震、ペトリニャ地震のどちらも、私が住むザグレブの自宅でもかなりの揺れを感じました。

 

でも、日本で何度か地震を経験してきた私にとっては(まず1回目、3月のザグレブ地震が)「はじめての地震体験」ではなかった上、地震発生時にも比較的新しい建物(自宅)にいた私は突然の揺れに驚きながらも「あっ、これくらいの揺れなら大したことはない(建物が壊れたり、人が亡くなったりする揺れではないだろう)」と思い込んでいました。

 

私が住んでいるのはザグレブ新市街と呼ばれる、比較的新しい建物が多いエリア。自宅は決して新しくはありませんが、築20年満たない物件です。

 

ぐらぐらと強い揺れは感じましたが、食器など棚のものが落ちてくるわけでもなく、壁や天井にヒビが入るわけでもなく、「あぁ、まさかクロアチアで地震に遭うなんて!」と驚きましたが、ニュースで市内の惨状を知るまで、正直「強い揺れじゃなくて本当によかった」と思っていました。

 

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部の様子 (©Marina Kuten Ouchi)

 

でも、地震発生後にテレビをつけたら流れてきたのは、直線距離にして自宅からたった5㎞も離れていないザグレブ中心地や旧市街エリアの建物が酷く傷ついた様子で、思わず目を疑いました。

 

ザグレブ中心地(ダウンタウンエリア)や旧市街エリアは築100年以上の古い建物が多く、なかには築400年というものもあります。

 

年末に地震があったペトリニャも同様です。歴史ある教会やレンガ造りの古い建物などは特に被害が大きく、残念なことにお亡くなりになられた方までいました。(ザグレブ地震では1名、ペトリニャ地震では7名)

 

歴史ある古い建物が多いヨーロッパの街並みは素敵ですが、耐震技術がない時代に建てられた古い時代の建物、古いレンガ造りの建物だからこそ出てしまった被害、「ヨーロッパの地震の怖さ」というものを痛感しました。

 

またクロアチアでは去年の地震で「生まれて初めて地震を経験した」「まさか自分が生きている間に地震があるなんて夢にも思っていなかった」という方が非常に多く、地震発生時・発生直後に「どうしてよいか全くわからなかった」という人がほとんどだということにも一種の衝撃を受けました

 

私たち日本人は子供の頃から「避難訓練」などを通じて、「地震から身を守る方法・知識」を多少なりとも学びますが、(実際に統計をとったわけではなく、あくまでも私の周りのクロアチア人に話を聞いただけですが・・・)クロアチアでは避難訓練をしたことがない人はもちろん、「地震から身を守る方法なんて、これまでチェックしたこともなかった」という方がほとんどです。

 

美しいザグレブの街並み

 

実際に(日本と比べると)滅多に地震がないヨーロッパ、クロアチアで地震を体験して、

 

・ヨーロッパ(地震が少ない地域)の地震ならではの怖さ

 

・地震から身を守るための知識の大切さ

 

・「予想外のケース」を考えることの大切さ

 

を痛感しました。

 

そこで、この記事にはクロアチアでの地震体験を通じて感じたこと、考えたことをまとめました。

 

海外在住の方だけではなく、日本にお住まいのみなさんにもぜひ伝えたいメッセージを詰め込んだので、お読みいただけながら一緒に「地震から命を守る方法」を考えてもらえると嬉しいです。

 

のちのち改めてお伝えしますが、「予想外のケースを考えることの大切さ」とは、みなさんが「海外旅行など、不慣れな土地でもし地震にあってしまったら・・・」と考えることもそのひとつです。

 

私は日頃クロアチアで観光ガイドとして仕事をしているのですが、ご案内するみなさんの身の安全を守るのも私の仕事のひとつだと思っています。

 

だから、今回クロアチアで地震を経験して「もし観光の案内中に地震に遭ったら、どうすればいいのか?どうすれば、みなさんの命を守れるか」ということも、地震のあとよく考えています。

 

なお、自分なりにいろいろ調べたり、考えたりしてこの記事を書いたつもりではいますが、防災の専門家ではありませんし、勉強・知識不足から「こういう時はそうじゃなくて、こうすればいいんじゃないかな?」「これは違うんじゃない?」と感じられることもあるかもしれません。もし、みなさんがお読みくださる中でそのような点が感じられたら、ぜひコメント欄などで教えていただけるとすごく有難いです。

 

実際の被害状況

12月29日に発生したペトリニャ地震直後の被災地の様子 (動画:Hrvatska: Pred mnogima još jedna hladna noć pod otvorenim nebom

 

2020年のザグレブ地震(M5.5)ペトリニャでの地震(M6.2)での震源地付近エリア(特に被害が大きかったエリア)での大まかな被害状況は次のようなものです。

 

被害状況はエリアや建物の古さにより様々ですが

 

・窓ガラスが割れた

 

・(建物の倒壊はなかったが)天井や壁にヒビがはいった
( ※なかには安全点検後、住み続けられるケースもあるが、安全確保ができないと判断されたため、引っ越しを余儀なくされた建物の住民も)

 

・食器やインテリアなどが壊れた

 

というものから

 

・屋根瓦などが滑り落ちて周囲の通りに瓦礫として散乱した

・屋根の一部が崩れた

・煙突が崩れた

 

という非常に危険なものも。

 

そしてペトリニャ地震では、「建物が全壊した」という最も酷い状態のものも散見されました。

 

12月29日に発生したペトリニャ地震で全壊した建物 (Hrvatska: Pred mnogima još jedna hladna noć pod otvorenim nebom)

 

なお、3月のザグレブ地震では1名の少女が、12月のペトリニャ地震では子供を含む7名がお亡くなりになられました。(その他負傷者は多数)

 

ザグレブ地震で犠牲になった少女は地震発生時に家の中でいて、不運にも頭の上に落ちてきた物で脳に致命的な損傷を負ってしまいお亡くなりになったと報道されています。

 

またペトリニャ地震で亡くなった方々は、民家や教会など建物の中にいて、崩れた建物の一部の下敷きになり命を落とされました。

 

1963年に発生したマケドニア・スコピエ地震(M6.1)※以降、クロアチアを含旧ユーゴスラビア全土で耐震規定の制定がなされたので、クロアチアでは「63年以降に建てられた建物はある程度安心」と言われていますが、今でも築60年はおろか、100年以上の建物がたくさんあるのが現状です。

 

(※1963年当時、クロアチアはマケドニアと同じく旧ユーゴスラビアの一員でした。この地震でスコピエの町の8割が破壊されました)

 

今回の2度に渡る地震でも、やはり大きな被害が出た建物はスコピエ地震以前に建てられたものが多かった模様です。

 

地震が起きた時の人々の行動

12月29日に発生したペトリニャ地震直後の被災地の様子 (Hrvatska: Pred mnogima još jedna hladna noć pod otvorenim nebom)

 

冒頭でも述べましたが、地震発生時にどのような行動を取ったかをまわりのクロアチア人の友達や知人に尋ねてみると

 

「どうしていいかわからず、ただ神に祈っていた」
「ただただ、震えていた」

 

など「どうしていいかわからず、その場で固まっていた」という人がほとんどでした。

 

ちなみに、クロアチア人の夫は(彼はソファーで寝落ちしていたのですが)一度目のザグレブ地震の際は飛び起きて「何?!地震!!?大丈夫かっ?!」と、完全にパニック状態で私がいる寝室に飛び込んできました。(3月22日のザグレブ地震は早朝6:30の発生でした)

 

寝室の扉の前には大きな棚などがいくつかあるので、もしもっと揺れが強かったら、彼が下敷きになっていたかも・・・とヒヤリとします。

 

その後の余震の際、そして年の瀬のペトリニャ地震の際は、揺れいている中、「逃げるぞ!」と私の手を引っ張って3階にある自宅の玄関から(階段を駆け下りて)外に飛び出そうとするので「飛び出したら危ないよ」と必死に止めました。(すったもんだしている間に幸い揺れは収まりました)

 

また友人のケースではこんな話も。ペトリニャ地震発生時、その友人はザグレブ市内中心部(古い建物が多いエリア)のあるお店でいたそうです。

 

「揺れに驚いて、隣に立っていた友達が慌てて外に飛び出そうとしたんだ。とっさに「あぶない」と僕が彼女の手を引き留めたんだけれど、次の瞬間、窓の外に上から瓦礫が落ちてきたのが見えた。屋根などから崩れ落ちた瓦礫が店の前に散乱していたよ」

 

手を引かれて止められたその女の子は「あなたが止めてくれていなかったら、きっと大けがをしていた。ヘタしたら打ち所が悪くて死んでいたかも・・・」と、とても感謝されたそうです。

 

地震から身を守る知識の大切さ

2020年12月29日 地震発生直後のザグレブ市内の様子 (HRT4より) ザグレブ市内ズリニェバッツ公園へ一時避難する人々

 

上でもお伝えしたように「まさか自分が地震に遭うだなんて夢にも思っていなかった」「どうすればいいのかわからず頭が真っ白になった」というクロアチアの人々の声を聞いて、やはり、とっさに地震から身を守る知識がいかに大切かと痛感しました。

 

日本では小さいころから避難訓練を何度か経験しますし、「地震が起きたら、まずは身の安全の確保。特に頭を守りましょう」と学びますよね。私も実際、早朝に起きたザグレブ地震の際はとっさに枕で頭を守り、お昼に発生したペトリニャ地震の際はとっさに近くにあった机の下に潜り込みました。

 

一方、クロアチアでは「地震の避難訓練なんて受けたことがない」「地震から身を守る方法なんて調べたこともない」という人がほとんど。(今後変わることを願います)

 

もちろん、いつ何時くるかわからない地震に“慣れている人“、”とっさの際にも冷静に行動できる人“なんていないのかもしれませんが、避難訓練の経験や知識があれば「地震発生時に頭が真っ白になって固まってしまった。どうすればいいかサッパリわからない」という事態はある程度防ぐことができるのではないでしょうか。

 

実際、周りのクロアチアの方々の話を聞いていると「『頭を守る』という行動がとっさにできなかった。そんなの思いつきもしなかった」という方ばかり。

 

また地震発生直後には「(揺れが収まったらすぐに)火の始末をする」という知識がない方もたくさんいました。

 

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部 イリツァ通り

 

我が家のママ(義母)なんて、(地震発生直後は泣いていた程ショックを受けていたのに)ザグレブ地震の数時間後、まだ余震で時折家がカタカタ揺れていたのにもかかわらず「怖かったわね。食べられる時にしっかり食べて、元気を出しましょう」と油をたっぷり使ったフレンチトーストを作りはじめたほどで、気が気ではありませんでした(汗)

 

なお、改めて日本の「地震から身を守るための10か条」を確認してみましたが、次のように書かれています(京都市市民防災センターのHPより)

1. グラっときたら、まずは身の安全の確保
(特に頭を守りましょう。
転倒のおそれがある家具から離れ,テーブル,机,ベッド,布団などの下にもぐりましょう。
その際,座布団,クッション,枕などで頭の保護を。
頭を守る物が無いときは,手の平を下にして頭の上で左右から両手で覆う。手の体の内側の動脈を切らないようにするのと,頭への直撃を避ける効果がある)

 

2. すばやい消火・火の始末
(大きなときは,まず身を守ることが一番,火を消すのは揺れがいったん収まってから)

 

3. 窓や戸を開け出口の確保

 

4. 火が出たらみんなで消火

 

5. あわてて外へ飛び出さない

 

6. 狭い路地、塀ぎわ、がけ、川べりに近寄らない
(ブロック塀、門、自動販売機などはなどは倒れやすいので注意)

 

7. 山崩れ、がけ崩れ、津波に注意する

 

8. 避難は徒歩で、荷物は背負って最小限にする
 (両手を自由にして,徒歩で避難しましょう)

 

9. 隣近所協力し合って助け合い

10. 正しい情報、確かな行動
(うわさやデマなどに振り回されないようにしましょう。まずは,ラジオやテレビなどで正しい情報を入手しましょう)

 

今回クロアチアの方々の行動パターンを聞いていると、まず何より「1.グラっときたら、まずは身の安全の確保」ができていない人が多いように感じました。突然の地震、恐怖で身体が固まってしまうのは無理もありませんが、「グラっときたら、まずは身の安全の確保」を知っている、知らないでは大きな差があるのでは・・・と思います。

 

「2. すばやい消火・火の始末」に関しては、「地震のあとは火に気を付けないといけないよ」と話すと「へぇ~、そうなんだ!知らなかったよ」と話す人が多い反面、幸いなことに(少なくとも私が知る限り)地震が原因の火事被害はザグレブ地震、ペトリニャ地震でも耳にしませんでした。でも、クロアチアでは知らない方が多いので、今後万が一のために他の10か条もあわせて広く知ってもらいたいですね。

 

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部、イリツァ通りの様子。建物前の道に瓦礫が散乱しています

 

「5.あわてて外へ飛び出さない」に関しては、まさに私の夫!
私たちは3階に住んでいるのですが、家が強く揺れる度に外に飛び出そうとして、その度に「揺れている時に外に飛び出したら危ない」と踏み留まる私と、「逃げるよ!」と私の手を引っ張る彼と互いに引っ張り合いになり、揺れが収まってもしばらく口論になりました(汗)

 

ただ、彼にも言い分があり「クロアチアの建物は日本のとは違うんだ!僕たちの家には煙突がある。煙突が崩れて屋根が落ちてきたら、机の下になんかいたら机ごとおしゃかになっちゃうよ!うちは周りに何もない庭もあるし、庭に飛び出た方が安全なんだよ!!」とのこと・・・。

 

実際ペトリニャでは崩壊した建物の下敷きになってお亡くなりになられた方もいますし、「とっさに建物の外にでて助かった。私たちが建物の外に出た瞬間、さっきまでいた場所に瓦礫が落ちてきた」と話す方もいらっしゃいます。

 

私たちの自宅の場合は然程古くはないため、M6程度の地震であれば(うちのような家だと)屋根や煙突が倒壊する恐れもあまりないと思うので「やはり飛び出さない方がいいのでは・・・」と私は思うのですが、このような話を聞いていると、夫の言い分も一理あるな・・・と思います。

 

でも、やはり一方で先程上で紹介した友人のケースのように「建物の外に飛び出さなかったから、瓦礫に当たらず命拾いした」という話もあるので、本当にケースバイケース。とっさの判断が非常に判断が困難です。

 

2020年3月22日 瓦礫に直撃された車。この様を見ると、瓦礫が直撃したら人間なんてひとたまりもないのが明白です

 

次は「6.ブロック塀、門、自動販売機などはなどは倒れやすいので注意」に関して。クロアチア(ヨーロッパ)にはブロック塀どころか、古いレンガ造りの建物がそこら中にあるので非常に危険です。

 

一方、日本と異なり、クロアチアには自動販売機はなく、人が歩行するエリアには大きな看板もほとんどありません(ゼロではありませんが、日本と比べると非常に少ないです)。

 

あと非常に気がかりなのは「レンガ造りの古い建物に囲まれた路地が多い」ということ。ヨーロッパの石畳の古い路地はとってもいい雰囲気で、ついつい路地裏散策に心がワクワクしてしまいますが、「地震発生時にそんなところにいたら・・・」と思うとゾッとします。周囲の建物がいつ崩れてくるかわかりませんし、頭上からは屋根瓦などが大量に落ちてくるかもしれません・・・。

 

「地震発生時にどんな場所にいるか」はもはや運次第ですが、少なくとも地震発生後に避難する際はそのような場所は絶対に避けるべきですね。

 

石造りの古い町並みが美しいドブロブニク旧市街

 

いずれにせよ、行政の呼びかけもあり、クロアチアの被災地では地震発生直後に避難する際は「公園など周囲に頭上から何かが落ちてくる危険性のないスペース」に避難している方がたくさんいましたが、私の自宅近所では「外には出ているけれど、建物の壁近くやバルコニーの真下に立っている」とうような方もちらほら見かけました・・・。(我が家では家族みんな庭、周りから何も落ちてこないようなスペースに避難しました)

 

また「8.避難は徒歩で、荷物は背負って最小限にする」に関しては、特に3月のザグレブ地震の直後、私の自宅近所では荷物をスーツケースに詰めて運び出している人をたくさん見かけました。機内持ち込みサイズの小さいものから、かなり大きなスーツケースを2つ、3つ運び出しているツワモノも・・・。

 

身近では、近くに住む主人の叔母さんも機内持ち込みサイズのスーツケースに貴重品を詰めて運び出していました。

 

ひょっとしたら「いざ大きな余震がきたら別にスーツケースを持って逃げるつもりはないよ。とにかく、貴重品が気になるし、外に避難している間、身の側に置いておきたいから・・・」「万が一、大きな余震で家が倒壊することを予想して、守っておきたいものをとりあえず運び出した」という方も多いのかもしれませんが、どう考えても大きくて重たいスーツケースをころがしながらとっさの避難・・・はできないですよね(汗)

 

こちらの記事(巨大地震 避難時に持つべきはリュックかスーツケースか)でも、防災都市計画研究所の会長さんが次のように述べられています。

 

「地震の後には地面にガラスの破片や瓦礫などが散乱しているので、スーツケースを持ち歩くのは大変です。しかも荷物を持つために手が塞がれてしまうので、危険回避上のリスクもある。その点、リュックは両手が自由になるので、避難の際にはとても便利です」

 

我が家ではザグレブ地震発生時以来、しばらくの間、リュックサックを「万が一の際に持ち出すバッグ」として玄関近くに保管していました。

 

「予想外のケース」を考えることの大切さ

2020年3月22日 ザグレブ市内中心部 イリツァ通り

 

日本の「地震から身を守るための10か条」をチェックしましたが、先程も述べたように、実際は「とっさに建物の外に逃げて助かった」「外に飛び出さずに命拾いした」という矛盾する声などを聞いていると、本当にケースバイケースだな・・・万が一の際、どうすればいいのやら・・・と本気で頭を抱えてしまいます。

 

地震発生時は「物が落ちてこない・倒れてこない・移動してこない空間に避難する」が鉄則ですが、その安全な場所を一瞬で判断するのが本当に難しい!!

 

また、以前日本のニュース番組か何かで「『地震が来たら机の下に隠れる』というのは正しいとはいえない」というような情報を見聞きしたので、「なんだったかな・・・」と思ってネットで調べてみると、次のような記事を見つけました。

 

⇒ 「まずは机の下に潜る」…日本の防災教育は間違いだらけだった!?

 

またこちらの記事(地震発生時テーブルの下に隠れるのはNG 圧死リスクも)では次のようなことが書かれていました:

 

子供の頃、学校で行なわれた避難訓練では、「地震が起きたらまず机の下に身を隠すように」と教えられた。だが、防災先進国の米国では、机の下に身を隠すことがリスクを高めるという考えが広まっている。

 

震災の救命活動を行なうボランティア団体「アメリカン・レスキュー・チーム・インターナショナル」の代表であるダグラス・コップ氏は、これまで875件もの救助活動を行なった経験から、「建物が倒壊した場合、テーブルでは荷重を支えられず潰れるため、下に隠れても圧死するリスクが高い」としている。

 

危機管理アドバイザーの国崎信江氏が解説する。「固定されていないテーブルなら、ぶつかって怪我をする恐れもある。落ちてくる物が少ない廊下や玄関に移動し、出口を確保するほうがいい」文科省の『地震時における退避行動等に関する既往研究の調査結果』(2010年)でも、テーブルの下に隠れようとして負傷したケースがあったことが報告されている。

 

これらを読んで、「たしかに、古い建物の中にいる際に地震に遭った際は、とっさに外に逃げた方が安全なんだろうな・・・」と思いますが、やっぱりクロアチアの被災地の様子を見ていると、建物前に瓦礫が大量に落ちているのをよく目にするので「本当に・・・もし古い建物が多い旧市街エリアにいたら、どこに逃げればいいのだ!?」と頭の中がグルグルします(汗)(少なくとも、明らかに古い建物の中に入る際は、外に逃げる方がいいのかもしれませんが・・・)

 

いずれにせよ、本当にケースバイケース。

 

「原則は、小さな揺れを感じたり緊急地震速報が来たら、安全ゾーンへ移動し、身の安全を確保することが大切です。

 

安全ゾーンとは、転倒落下物の少ない、閉じ込められない場所なので、必ず机の下という訳ではありません。」

 

出典:4yuuu「地震だ!机の下に隠れる」は間違い?専門家に聞く本当に安全な場所

この言葉に集約されるのかな・・・。

 

いずれによせ、いろいろ調べて考えているうちに「地震、災害では想定外を想定する」ことが重要だと痛感しました。

 

「安全な場所」は机の下かもしれませんし、とっさに飛び出した建物の下かもしれませんし、大きな柱のそばかもしれません。あらゆる状況に応じて「自宅ならここ」「よく行くあの場所、あの建物ならこうしよう」「街のあそこを歩いている時はこうしよう」と、一度でも想定しておくことが大切なのではないでしょうか。

 

私の場合は自宅での想定はもちろん、クロアチアで観光ガイドをしている際に地震に遭ってしまった時のことを予想して「ザグレブのあのエリアならこうしよう」「ドブロブニクのあの辺を歩いている時だったら・・・う~ん・・・」というように、いろいろ頭の中でシミュレーションしてみました。

 

地震が起きたらどうすればいい??ヨーロッパならではの地震の怖さ

12月29日に発生したペトリニャ地震直後の被災地の様子 (Hrvatska: Pred mnogima još jedna hladna noć pod otvorenim nebom)

 

ですが、どんなにシミュレーションしたところで、例えば「石の壁、レンガ造りの古い建物、狭い石畳の路地にそこら中囲まれた、ドブロブニク旧市街やスプリット旧市街で地震に遭ったら・・・」と想像すると、何が正解なのか私にはなかなか答えが見つけられそうにありません。

 

実際にクロアチアでの大きな地震を2度経験して、「(「あの程度」というと語弊があるかもしれませんが・・・)あの程度の揺れで、まさかこんなに建物が崩れるなんて・・・」と、ヨーロッパの地震はある意味、日本の地震よりも恐ろしいと感じています。

 

ドブロブニク旧市街内の素敵な路地。でも、こんな所で大きな地震に遭ったら、みなさんはどうすればいいと思いますか??

 

もしみなさんが「こんな場所で地震に遭ったら・・・」と想像したら、どんな行動を取るのが正解だと思いますか?

 

私には「とにかく頭を守る。近くに広いスペースがあったら、とにかく頭を守りながらそこをめがけて走る」しか以外今の所思いつきません。もし、なにか良いアドバイスがあればぜひ教えてください。

 

1667年のドブロブニク大地震ではバルコニーの下敷きになって亡くなった方も多数いたのだとか。素敵なバルコニーも大地震時には人の命を脅かすものとなります。写真はトロギール旧市街の様子

 

なお、私はこれまでガイドとして日々、日本からお越しになる方をご案内させていただく際に「1667年にはドブロブニク、1880年にはザグレブで記録的な大地震があったんですよ」とお話させて頂くことが多いのですが、「へぇ~!!クロアチアでも地震があるんですね。ヨーロッパでは地震はほぼないものと思っていました」と話される方が非常に多いです。

 

クロアチアに限らず「ヨーロッパでは決して地震がないわけではないが、ゼロではない」

 

(そうならないことを心から願いますが)この記事を今読んでくださっているみなさんが海外旅行中に地震に遭ってしまう可能性もゼロではりません。

 

また、私と同じように、今クロアチアやその他外国にお住まいの日本人の方もいらっしゃると思います。それから、外国に大切な家族、友人がお住まいの方もいらっしゃることでしょう。

 

だからこそ、改めてこのことをみなさんに知ってもらいたい、「“万が一”に備えて、“予想外”を想定する時間を持ってほしい」と思いこの記事を書きました。

 

実際、私自身もまさかクロアチアで大きな地震を経験すると思っていませんでしたし、2020年までは周りのクロアチア人たちも「大きな地震があったことは過去の話(ザグレブでは1880年)。自分たちが生きている間はきっと大丈夫だろう」と冗談半分で話す人がほとんどでした。

 

日本でも度々「いつ大地震がくるか・・・」とニュースなどで話題に上がりますが、残念なことに地震の発生を正確に予知できる技術は現段階ではありませんよね。

 

 

 

実際、クロアチアでも「過去475年にクロアチアで起きた地震」のデータを集めて、地震学者さんたちが「クロアチア地震発生予想マップ」(上の画像↑)を作成されていたようですが、M6.2の地震があったペトリニャ周辺は「比較的地震の可能性は中程度」とされる緑~黄色エリアに分類されていました。(2020年3月に大きな地震(M5.5)があったザグレブは赤エリア(地震が発生する確率が高い)に指定されています)

 

特にドブロブニクやスプリットなどが位置するダルマチア地方は赤エリアが広く、「ペトリニャ周辺エリア(黄色エリア)の2倍近い確率で地震が発生する」と予想されていたのにも関わらず、そんなペトリニャで近年クロアチア最大規模の地震が発生してしまいました。

 

本当に地震はいつ何どき、どこで起こるかわからないものですね。

 

日本、クロアチア、世界のほぼどこにいても地震に遭う可能性はあるものです。

 

常に地震のことを考えているというわけにはいきませんが、最低限の知識を備え、他人事だとは思わずに頭の中で「万が一の際に自分の身を守る方法」を一度でもシミュレーションすることは大切なことだと思います。

 

そして、ここでお伝えしたように、日本とは少し異なる海外での地震事情。決して脅すわけではありませんが、みなさんがいつもとは違う土地や海外へ行かれる際は「もし訪問先で地震に遭ったら・・・」と万が一のことを少しだけでも想像して考えてみてください。

 

「はじめて行く場所なので、どんなところか想像つかないしわからないよ」という場合がほとんどだと思いますが、「とにかく揺れたら頭を守ろう!頭上に気をつけよう」と考えておくだけでも、いざという時違うのではないか・・・と思います。

 

それから、みなさんの大切なご家族やご友人がもし地震が少ない国・地域にお住まいであれば、なにかの機会にぜひ「地震発生時の身の守り方」を話して一緒に考えてあげてください。特に「地震をまったく経験したことがない」「地震に遭うなんて考えたこともない。避難の仕方の知識がない方」という方にとっては、そのような話をみなさんとする機会は非常に貴重なものとなるはずです。

 

なお、クロアチアの隣国であるスロベニア・リュブリャナを本拠地とするトヨタアドリア社さんは、ペトリニャ地震発生直後から、被災後の注意事項を記したこちらのドリル(英語)の配信を行われています。

 

もし海外ご出身・在住のご友人で「地震を経験したことがない」という方がいらしたら、「地震発生時の身の守り方」の話し合いとあわせて、ぜひこのドリルも送ってあげてください。

【その他クロアチア向け避難マニュアル関連情報】 

 

ザグレブ市が配布している地震時の避難マニュアル

 

※クロアチア語の資料。簡潔に非常にわかりやすく地震発生時・避難時の身の守り方が書かれています。日本の「地震から身を守るための10か条」で教えられること、あるいはそれ以上のことをほぼすべて網羅しています。みなさんの身の周りにクロアチア在住の方、もしくはクロアチア語がわかる方がいらしたら、ぜひ教えてあげてください。

 

ザグレブ市における地震発生時の避難マップ(Upute za slučaj potresa u Gradu Zagrebu)※クロアチア語

被災したザグレブ大聖堂

 

ペトリニャ地震から2週間近く経った今でも、自宅があるザグレブも時折カタカタ・・・と揺れ、余震が続いています。(最近はかなり微弱なものになり落ち着いてきました)

 

今後、大きな余震がないこと、新たな大きな地震が起きないこと、クロアチアが地震に対してより強靭性のある国になっていくこと、そして何より被災地の一日も早い復興を心から願っています。

 

そして、どうかこの記事を読んでくださったみなさん、みなさんの大切な方がが大きな地震に遭いませんように。万が一のことが将来的に遭っても、無事でいてくださりますように・・・!

 

かなり長い記事になってしまったにも関わらず、最後までお読みくださりありがとうございます。

 

(2021年1月12日 小坂井真美

クロアチア大地震被災地への募金、支援について

 

この度、駐日クロアチア共和国大使館による支援金受付のため口座が開設されました。

 

ご興味をお持ちくださる方はこちらの記事(【クロアチア大地震義援金】駐日クロアチア共和国大使館が寄付金の口座を開設)をご覧ください。

 

♥ クロたびスタッフ・ブログTwitterFacebookでは日々クロアチア各地の最新気候情報をはじめ、さまざまな情報をお伝えしています。よろしければフォローしていただけると嬉しいです。

 

またYou Tubeチャンネル「クロたびしょうぜひご覧ください☆

【これを読めば完璧!?】

クロアチア旅行・観光のよくある質問集

みんなのご質問にクロたびスタッフがお答えします!

 

【クロたびスタッフの著書もよろしくお願いします】

 

⇒ ガイドブック「アドリア海の素敵な街めぐり クロアチアへ」著書発売のお知らせ

 

「見落とすべきでない観光スポットは?」「おすすめのホテル、レストランは?」「お土産はどこで買えばいい?」など、これまで数えきれないくらい聞かれたご質問に対する答えをギュッと一冊に詰め込みました。

 

また当サイト(クロたび)では紹介していないお気に入りのカフェやレストランやホテル、お店、各町でのおすすめの過ごし方などなど・・・当サイトには載せきれていない情報もたくさん盛り込んでいます。

 

よろしければお手に取っていただけると嬉しいです。

 

 

⇒ 「旅するクロアチア語」 著書発売のお知らせ

 

「クロアチア語を勉強してみたい」「クロアチア語って、どんな言葉なんだろう?」という方はもちろん、「これからクロアチアに行く予定!ちょっと言葉を覚えて、より心に残る、出会いや発見のあるクロアチア旅行を楽しみたい」という方もお手に取っていただけると嬉しいです。